大規模修繕工事はウィークポイント対策も忘れずに


もろもろ 037

分譲マンションでは、大半のケースで12年~15年に一度実施される大規模修繕工事。
これは大規模修繕工事を施工する時期としてはけっして早すぎることもなく、またとくに遅すぎることもなく、妥当なタイミングでの実施といえるでしょう。

ただ修繕工事を実施する際、仮設足場の設置が必要となるような、普段メンテナンスできない箇所も含めて、基本的なことですが、意外と見落とされているポイントがあります。

竣工後10年程度経過すると、建物の特定箇所だけひどく汚れていたり、ひび割れが数多く発生したり、著しく劣化が進行している箇所などが、目に付くもの。ところが大規模修繕工事の仕様書を確認すると、それらのウィークポイントについて、修繕後に同様の事象を繰り返さないための工夫や対策が盛り込まれていないケースが見受けられるのです。

これではせっかく大規模修繕工事を実施しても、建物の弱い部分や汚れやすい部分といったウィークポイントが再現されてしまいますよね。

さくら事務所でご相談をお受けしたあるマンションでは、大規模修繕工事が完了して3ヶ月程度しか経過していないにもかかわらず、すでにメインエントランス上部の庇の先端部分の汚れが目立ちはじめていました。

居住者の方によると、このメインエントランスの汚れは新築竣工後間もない時期から汚れが目についていたとのこと。今回の大規模修繕でせっかく積立金を使って修繕をしたのに、汚れ防止の有効な対策が立てられないまま、表面だけ一時的に綺麗になっただけだったと残念がっていらっしゃいました。

特に1回目の大規模修繕工事では、新築竣工後に建物に現れてくるウィークポイントに対して、しっかり対策を行なうことが大切です。

ところでこの大規模修繕工事、万が一の予定外の工事発生に備え、予備費として工事金額の3~5%程度の予備費が計上されることが一般的になっています。
それが工事に着工して足場を架けた直後、外壁を含む全体を調査した結果、「想定していた予定外の工事」を超える不具合が発見されて、予備費をはるかに上回る多額の追加工事を行なわざるを得ないケースも頻発しています。

一回目の大規模修繕工事で、実際に発見される「想定外の不具合」には以下のようなものが多いです。

1)広範囲およぶ多量の外壁タイルの浮き
2)竣工図書と異なる位置に設けられたコンクリート目地やタイル伸縮目地
3)構造(耐震)スリットの不設置

1)の外壁タイルの多量な浮きは、外装仕上げで建物の構造的な問題ではありませんが、タイルの剥落につながり人身事故に発展する恐れがあり、放置する事はできません。また、外壁タイルは足場が架けられていないと修繕できない部分が多いため、大規模修繕工事後に新たに修繕するのは予算面から見ても非効率的です。

2)の目地に関する不具合は、1)のタイル浮きの原因であることが多く、タイルの張り替え補修時に併せて目地の不具合も適切な対策を施さなければ、張り替えたあとの外壁タイルが再び不具合を起こす可能性があります。

3)の構造(耐震)スリットの不設置とは竣工図書に記された所定の位置に言葉通り、構造スリットが設置されていないという状況です。構造スリットとは、柱と壁の間に意図的に隙間(スリット)を設けて柱と壁を構造的に分離し、自由度(靭性)を高めて柱は持ちこたえさせることで、建物が大破しづらいようにする「隙間」または「隙間用部品」のこと。

図面に書かれた構造スリットがそのとおりの位置に設置されていれば、そのスリットのおかげで柱が持ちこたえるよう設計されているわけですから、不設置は耐震性に大きく影響する可能性がある深刻な不具合と言えます。

これらの不具合が発見された場合には、建物の通常使用に大きな影響を与える可能性があるため、瑕疵担保責任期間の10年を過ぎていたとしても、分譲会社や施工会社との折衝で修繕費用の全部又は一部を負担してもらえるケースもあります。まずは正確な状況把握が大切ですね。